古い伝統を現代に受け継ぐ日本料理。人は古くから、喜びにつけ悲しみにつけ、集い合って食事を共にすることによって、現世を生きることへの潤いを求めてまいりました。日本の四季の行事慣行の中から三見(花見、月見、 雪見)のテーマに絞り、今回は花見のおもてなしのための会席料理五品(先附、吸物、向付、焚合、八寸)を組んでみました。
1.先附 筍姫皮真砂和え
唐墨、木の芽
(1)筍は湯がいて繊切りに
し、八方出汁で煮いて
おく。
(2)唐墨は細かく切り酒に
浸してもどし、柔らか
くなったら細かくほぐ
す。
(3)筍(1)の浸し地をき
り、ほぐしたカラスミ
(2)と和えて器に盛
り、木の芽を天盛りに
する。
2.吸物 吉野仕立
そぼろ鱧、桜豆富、蛇の目
瓜、露生姜
(1)鱧は上身にして骨切り
をして皮を引く。
(2)包丁で細かく叩く。
(3)酒を鍋に入れて沸か
し、塩味を取り、
(2)の鱧を入れて酒煎
りにしてそぼろに仕上
げる。
(4)桜豆富は、胡麻豆富を
少しピンク色に着色し
て桜の型に流して作
る。
(5)瓜は塩と炭酸を合わし
てよく揉んで薄く切
り、蛇の目に打ち抜い
て色よく仕上げる。
(6)鍋に吸地を合わして薄
く葛を引き、鱧のそぼ
ろ(3)を加えて吉野
汁に仕立てる。
(7)椀に桜豆富と蛇の目瓜
を盛りつけ、(6)の
そぼろ汁を注いで露生
姜を落とす。
3.向付 油女そぎ造り/散らし赤貝
軸みつ葉、土筆、白髪独活、
山葵、土佐醤油
(1)油女は水洗いをし、三
枚におろして腹骨をす
き、小骨を取り除く。
(2)皮を引き、薄く斜めに
そぎ造りにする。
(3)三つ葉は軸にして色出
しをしてから、3セン
チほどに切り油女のそ
ぎ造りと混ぜて器に盛
りつける。
(4)赤貝は上身にして細い
繊に切り、(3)の油
女の上に散らします。
(5)土筆は少し長い物を求
め、はかまを取り灰汁
で湯がいて流水に晒
し、水気を切って八方
出汁に漬けておき、3
センチほどに切り、立
てかけて盛り付ける。
(6)独活はできるだけ細か
く縦に打ち、水に晒
し、萎れないように絞
って盛りつける。

4.焚合 射込筍土佐煮
蕨、木の芽
(1)筍は常の通りに湯がい
て冷まし、皮をむく。
根元の固い部分は切り
取り筋を薄くむく。
(2)八方出汁で充分に煮込
んだ後、好みの大きさ
の輪切りにして真ん中
を打ち抜く。
(3)鰻を一度白焼きにし
て、酒、砂糖、濃口で
煮込み、箱の中に射込
みます。
(4)盛り付ける前に温め
て、適宜な厚さに切
り、粉鰹をまぶして盛
る。
(5)わらびは灰汁で湯がい
て色よく仕上げ、八方
出汁に浸けておいた後
好みの長さに切り、筍
と盛り合わし木の芽を
散らす。

5.八寸 花見団子/白魚筏すし/踊諸
子飴煮/八ツ橋ごぼう/水玉胡瓜/
木の芽/桜花
〈花見団子〉
(1)むきえびを擂り潰し、塩、
味醂、淡口で味を調えて小
さく丸め、みじん粉をまぶ
して油で揚げる。
(2)半熟玉子の黄身を裏漉しに
かけて塩子のミンチを混ぜ
込み、えびと同じ大きさの
丸に取り、煎玉をまぶす。
塩子のミンチは塩抜きした
後、味醂、濃口出汁で味を
付けてから使用する。
(3)うすい豆を色よくゆがき、
裏漉しにかけて上新粉を少
し加える。塩味を調えて二
枚鍋で練り、同じ大きさの
丸に取る。三色の団子を青
竹の串に打ちます。
〈白魚筏すし〉
(1)白魚は立て塩に1時間ほど
浸し、細い串を目に通して
つなぎ、蒸しにかける。蒸
し上がったら頭と尾を切
り、握った寿司飯の上に6
~7尾並べて筏に見立て
る。
〈踊諸子飴焚〉
(1)小さな諸子を求め、一度の
ぼり串を打って白焼きにし
てから、酒、砂糖、濃口、
水飴で焚き上げる。
〈ハツ橋ごぼう〉
(1)ごぼうは太めのものを求
め、5センチほどの長さに
切って湯がき、縦半分に切
り、芯をごぼうの太さにあ
わした打ち抜きで抜いて、
ハ方出汁で煮いて含め、丸
みの方に雲丹を塗って焼き
上げる。
〈水玉胡瓜〉
(1)胡瓜は色出しをして桂にむ
いておく。鱚は上身にして
立塩に浸し、一度水で洗っ
て水切りした後、白板昆布
で包んでおく。先の胡瓜を
広げ、昆布〆した鱚を薄く
開いて並べ鳴門巻きにし、
小口切りにする。
〈木の芽、桜花〉
(1)八寸皿に花見団子、白魚筏
すし、踊諸子飴焚、ハツ橋
ごぼう、水玉胡瓜を盛り付
ける。木の芽、桜花を散ら
して仕上げる。

※焼物 太刀魚八幡巻/蒲公英白和え/
はじかみ
(1)太刀魚は三枚におろし、
上身にする。
(2)独活は皮をむき、30cm
ほどの長さに切った後、
5~6本の縦に順に割り、
7~8本ずつ束ねて、
(1)の太刀魚で身側を表
にして巻き、両端を竹皮
でくくって照焼きにす
る。
(3)たんぽぽは葉をむしり、
きれいに洗って灰汁で湯
がき、流水によく晒して
絞り、八方出汁に浸けた
後、これをよく絞り、白
和衣で白和えにする。
(4)はじかみは葉を切り揃え
茎根をひとむきにして、
熱湯に約10秒浸してざる
に取り、塩をふり、団扇
であおいで冷まし、二杯
酢に浸す。
※花見弁当① 瓢箪玉子、結蒲鉾、鱧照
焼、蕨鳥賊、鮎化粧焼、
木の葉南瓜
※花見弁当② 大葉百合根蜜煮、大原木
ぜんまい、車海老旨煮、
春菊胡麻和合、唐墨小川
漬、網笠椎茸、巾着麩、
桜形御飯、豆御飯、筍御
飯、蕨御飯、香物(桜
漬、菜種、奈良漬)
※留椀 清汁仕立
新蓴菜、桜花塩漬、玉あられ、
木の芽
<注> ※印は会席料理コースの参考